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執筆者の写真daisuke ichinose

コース料理を考える時のプロセス

料理人のブログということなので、一度くらいは料理と真剣に向き合った記事を書こうと思う。一重にコース料理を考えると言っても、その料理人の置かれた立場によってメニューの内容や構成は変わってくる。というのも、自分がオーナーシェフなのか雇われのシェフなのかによってもメニューに対する取り組み方が微妙に違ってくると思うからだ。

それは、自分の身銭を切ってお店を運営しているかどうかによって、選択する食材にも違いは出てくる。例えば、オーナーシェフの場合、自分のやりたい料理を作るよりも、より原価を抑えながらクオリティーを維持し、且つよりお酒が出やすいメニュー構成に持っていく可能性が高くなる。もちろん、ミシュランの星を獲得するようなレストランは別だが、概ね当たっているとは思う。



反対に、会社に雇われているシェフの場合は、比較的自由度も高い印象がある。何故なら、ある一定の水準を満たしさえすれば、ある程度評価される為、個人店のシェフほど原価を気にせずに自由なコース構成になる傾向は強いと思われる。

やはり身銭を切ってお店をやると、店の売り上げが直接生活に影響を与える為、どうしてもシビアにならざるを得ない現状がある。



まあ細かい考察は置いといて、今回は純粋に高級レストランの料理人がコース料理を考える時に、どういったプロセスを経てコース料理を組み立てていくのかを具体的に書こうと思う。まず初めに、コース料理を考える前にやること。それは、その季節の旬の食材をピックアップすることだ。大体、レストランのコース料理は月ごとに変わっていくものだが、当月のメニューは当たり前だが、前月に試作をして決めなければならない。

従って、春の内に夏のメニュー、夏の内に秋のメニューといった具合に、季節を先取りしてメニューを考えていく必要がある。その為には、その季節に合わせた食材をチョイスするのが先決になる。旬の食材のチョイスが必要なのは、主に野菜魚介類果物だ。



次に、食材をピックアップしたら、コースで使う中核となる食材の選定に入る。この際に、チョイスの基準としては、メジャーな食材を土台にしつつ、希少価値の高いマニアックな食材をポイントで使う意識を持つことが重要だ!

まずは漠然とその食材から料理のイメージを創り上げる。この段階では、この食材は前菜に使用し、これはパスタで使おうなどといった先入観を持つ必要はない。あくまで、漠然と食材をどのように調理するかというレベルのイメージでいい。この作業を野菜、魚介類、果物に分けて、それぞれで行う。



それから、3つのカテゴリーでそれぞれ感じたインスピレーションを、素材ごとに頭の中で掛け合わせていき、何パターンもシミュレーションしてみる。この作業の繰り返しによってブラッシュアップしていき、自分で納得できるまで頭の中でクリエイトする。

この食材✖️調理法を何パターンも組み合わせることで、1番しっくりきたものを採用し、最終的な料理の形へと持っていく。



その次に、ようやくコースの前後を意識したコース料理の順番を考えていくことになる。

ここでは、先に考えた料理をコースの流れを意識した、ベストなポジションに配置していく作業になる。同時に、ワインとの兼ね合いも考え、場合によってはソースを変更するなどのマイナーチェンジも行う。コース料理では、一品一品の完成度も重要だが、前後の皿同士が流れの中で繋がっていくようなイメージが必要になる。ドリンクの流れも同時に意識する。

この考えが意外というか、かなり重要になる。泡から白〜赤という一連の流れを壊さないような順番が理想だ。この流れを無視すると、最終的なコースの満足度も低下し、ドリンクの売り上げにも響いてくる



最後にメニューが決まったら、どういったデザインで皿に盛り付けるのかを考える

だが、クリエイティブな作業に慣れてくると、たまに皿のデザインから料理のイメージが出来上がることもあるので、何というか面白い。

この考えたメニューをどんな感じで盛り付けるのか?はっきり言って、ここが1番料理人のセンスが問われる部分かもしれない。どんなに良い料理でも、盛り付け次第では全て台無しにしてしまう可能性もある。また、その逆も然りだ。例え料理が微妙でも、盛り付け次第で素晴らしい料理に変貌を遂げることもある。



料理のアイデアを出すコツは、色んな料理を見て勉強することだとは思うが、それにあまり

囚われるとバイアスがかかり、クリエイティブな発想というよりかは、ただのパクリになりかねないので、ほどほどに留めておくのが1番良いと筆者は考える。

料理人の色というものは、白いキャンパスに様々な色の絵の具を塗り足していくようなものなので、あまり他の色を入れすぎても、逆に自分の色を見失う危険性も孕んでいると思う。

既存の枠に囚われない自由な発想で、これからもクリエイトし続けて欲しい!

自分のアドバイスが少しでも、皆さんのクリエイティビティーの助力になれれば幸いです。

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